01肉眼で見える虫歯は、すでに大きくなっている
しかし、慌てないで下さい。
なぜなら、 虫歯というものは、より早い段階で正しい初期治療をすることで、その後の進行が大きく変わるものなのです。
歯は、へこんだ部分に食べ物が詰まっているだけでも、茶色く見えたりします。
その後、適切なブラッシングや歯垢の除去などをしないで放置しておくと、虫歯菌が酸を産生し、歯のエナメル質を溶かして穴を開けてしまいます。
こうなってしまうと虫歯はどんどん酷くなっていきます。
しかし、穴があいてしまう前に、適切な予防処置を続けることでエナメル質を再石灰化させて虫歯の進行を停止できることもあります。
初期の虫歯であれば治療も簡単に終わります。現在では、初期から中期くらいまでの虫歯の修復方法として、CR修復(コンポジットレジン修復:白い樹脂を用いた治療)という治療法が主流です。
金属を用いた治療とは異なり、小さな修復であれば、色調・接着力などの面で非常に優れた仕上がりを得ることができます。また、知覚過敏症のある場合の治療にも有効です。
虫歯が見つかったから大がかりな治療になる!と考えるのではなく、まずは原因を取り除く術を身につけて(ブラッシングに熟達する)、必要であれば最小限の治療をすることが歯科治療の基本なのです。
それでは、どうやって虫歯を見つけるのでしょうか?
肉眼で見える範囲には限界があります。肉眼では虫歯に見えなくても、ひたひたと虫歯菌が忍び寄っている歯が沢山あるのです。
そのために、用いられるのが「顕微鏡」(歯科用実体顕微鏡)です。
歯科用顕微鏡は、肉眼の約30倍まで拡大でき、その患部を詳細に観察することを可能にします。
この歯科用顕微鏡により肉眼で見えなかった部位にも適切な診断を下し、精密な治療を行うことが可能になるのです。
肉眼で見て、まだ大丈夫そうな歯でも、歯科用顕微鏡を使ってみることで、肉眼では見落としがちな歯と歯の間の虫歯や、かぶせものとの隙間などにある虫歯の見落としも少なくなり、適切な判断をする事が可能になります。
できるだけ、治療が必要な歯の見落としを少なく。これが虫歯治療の基本です。


02肉眼と歯科用顕微鏡の差
人間の髪の毛の太さは、だいたい、70ミクロン〜90ミクロンの太さしかありません。
もちろん、肉眼や拡大鏡で一本の髪の毛を精密にメスで削ぐことなど不可能です。
しかし、「顕微鏡とそれを使いこなす技術」があれば、それが可能になるのです。
歯科用顕微鏡は、人間の視力の約400倍(20×20)の視覚情報を得ることで、初期に発生した虫歯まで見つけることができます。これからの歯科治療は、顕微鏡無しでは考えられない時代になっていくことでしょう。
03最小限に確実に削るために歯科用顕微鏡を用いる
これまで歯科医は、肉眼で診ながら歯を削ってきました。しかし、これは、盲目の世界で削ってきたようなものです。先ほども「初期の虫歯は肉眼では見えにくい」と書きましたが、これは削る場合も当てはまります。
暗く狭い口腔内の歯と歯の間を削ることは容易なことでは無く、誤って健康な隣の歯を傷つけたり、必要以上に削りすぎたりすることも多かったのです。すると誤って削ってしまった隣の歯から新たな虫歯が発生する確率は2.5倍以上に増えてしまう、という研究論文もあります。
微妙な歯と歯の間や、虫歯と健康な歯との境目。これを確実に見分けて、必要な箇所のみ最小限に削る技術こそ、正しい歯の削り方です。しかし、これは、歯科用顕微鏡の世界でしかなし得ることはできません。
盲目的な切削から、クリアに見ながら安全な切削へ。これが、最先端の歯科治療なのです。
下記の動画は、歯と歯の間に生じた虫歯を削りとってコンポジットレジン樹脂で回復する治療をしている動画です。顕微鏡歯科治療の世界では普及しているRubber Wedge Method という方法ですが、これも当院で開発した手法です。削り取った直後に、レジンを直接埋めるので、術者の力量が問われます。顕微鏡で確認しながら処置をすることで、天然歯のようにキレイに、しかも精確に回復することができました。