日本顕微鏡歯科学会Webセミナーで、新型コロナウィルス感染の予防における当院の取り組みについてお話しをいたしました。(2020年4月25日 配信)これまで、歯科治療において避けることができなかった、飛沫感染のリスクを非常に低くできる画期的な対策が『マイクロドレープ』です。全ての歯科治療においてマイクロスコープを使用している歯科医院だけが行える感染対策です。一般の皆さまにも知っていただきたく、以下に文字起こしをしておりますので、動画を併せて御覧ください。 

01歯科治療は感染リスクが高い

歯科医師、歯科衛生士は、新型コロナウイルスの感染リスクの高い職業の一つです。

<感染リスクの高い職業>
歯科医師、歯科衛生士、産婦人科医、救急救命士、獣医師、看護師、キャバクラ嬢、風俗嬢 など

<感染リスクのやや高い職業>
宅配業、ゴミ収集業、バス運転手、介護士、警察官 など
(週刊女性PRIMEより)

そもそも、ウイルス感染には病原体があり宿主があります。
そこに伝播経路の3つが揃うと感染が起こります。
歯科治療には、この伝播経路(感染経路)が非常に沢山あります。

伝播経路伝播経路の中には、

1. 接触感染
2. 空気感染
3. 飛沫感染

の3つがありますが、歯科治療では接触感染のリスクが高いです。

『ソーシャルディスタンス』という言葉がありますが、一般の歯科治療では、患者さんの近くで覗き込んで治療するわけですから、飛沫感染のリスクが非常に高くなります。もしも患者さんが新型コロナに感染していれば、その唾液が飛び散ったり、呼気を近くで吸ってしまうなど、歯科治療は非常に危険な治療だと言えるでしょう。

例えば、歯科治療にラバーダム防湿という処置があります。
これは患者さんの飛沫を飛び散るのを防ぐので、新型コロナの感染リスクを低減すると言われています。世界的にも、ラバーダム防湿が感染予防の有効な手立てとして推奨されています。

しかし、それでもまだ、我々は安心はできません。

02ラバーダム防湿とマイクロドレープ

これまで、感染予防のためにマイクロスコープを使い、ラバーダム防湿を行ってきましたが、それでも私達の飛沫拡散への恐怖はぬぐえませんでした。

そこで、ゴーグルを装着しようと考え、装着して顕微鏡を覗いてみたら、接眼レンズから目の距離が離れてしまい、視野が小さくなるので診ることができませんでした。

ところがある日、ある歯科医師が、顕微鏡をビニールで覆って治療しているという投稿をSNSで目にして、非常に感激しました。これを知り、「マイクロスコープは新型コロナの武器になる」と思いました。

そこから、私のマイクロスコープをビニールで覆い飛沫拡散を防止するためのドレープの改良がはじまりました。

自分一人で考えるよりも、多くの意見が集まったほうがより良い改善案が出ると思い、仲間とメッセンジャーを通じて、改良案の意見交換を繰り返し一つの形に収まりました。

現在は、このような形に進化しています。

マイクロドレープ

マイクロスコープを覆うビニールの下を、ヘアーキャッチャーのフレームで裾を広くし、サクションなどの医療器具が入れやすいようなスタイルとしています。

マイクロドレープ

私の治療スタイルからすると、手元がもう少し広く空いている方が、ハンドピースやサクションなどが出し入れしやすいと思いました。

03マイクロドレープの効果

マイクロスコープを用いず上顎の治療をしようとすると、だいたい、このような姿勢で覗き込みながら治療します。

マイクロドレープ

その場合、患者さんの口腔からの唾液などが飛び散ってしまいます。いかにPPTをしたとしても、飛び散ってくるのは避けようがありませんので、歯科治療は危ないということがわかります。

そこに、マイクロスコープを使った治療の場合だと、患者さんの口と、少し離れますので、だいぶリスクは軽減されると思います。しかし、どんなに一定の距離離れていても、治療中のちょっとした加減でアシスタントのバキュームがうまくいかなかったりすると、飛沫はかかってしまいます。

マイクロドレープ
そこに、マイクロドレープがあれば、ドレープの内側には水滴がかかりますが、我々には全くかからないということになります。これは非常に大きい安心感だと思います。

マイクロドレープ

マイクロドレープを用いて治療すると、いかに、これまで我々が飛沫をあびて治療していたのかということが思い知らされると思います。

04大きいマイクロの場合

<動画 36:23〜>
YouTube動画の上記時間より大きいマイクロスコープの場合のマイクロドレープの作り方を説明しています。

プロエルゴなどの大きなマイクロスコープの場合は、まずはハンドルの上にラップを巻きます。このうえにビニールをかぶせるとツルツルして滑るからです。

普通の食品用のラップでハンドルを巻きます。(少し余裕があるよう、きつすぎず)

レンズが出せるように、30㍑の透明なビニールの角を切ります。切った角からレンズをだして縛ります。接眼レンズを出すようにビニールの一部を手で切ってレンズを出します。

ヘアーキャッチャーのフレーム部分をハサミかカッターで切ります。
ビニールは90㍑を使います。(900☓1000)

ビニールの入口にリングをかけます。ビニールを中に入れて外からまきます。イージーシーラーでシールしていきます。全周にわたり、ビニールの外側にくるようにシールしていきます。

イージーシーラーだと、外す時も楽に外せます。

ビニールの底の真ん中の当たりを手でさいて、マイクロスコープを下からかぶせるように覆います。

最後に接眼レンズのところを指で割いて、レンズをだします。ハサミなどを使うとレンズを傷つけてしま可能性があるので、必ず指で割いてください。

処置が終わったあと、すぐはエアロゾルが舞っている可能性があるので、しばらくはバキュームを稼働させて、できるだけ空気を吸い取ります。上のほうが閉まっている段階で下のフレームを外します。その後、上もはずします。

05小さいマイクロの場合

<動画 51:55〜>
YouTube動画の上記時間より小さいマイクロスコープの場合のマイクロドレープの作り方を説明しています。

車のサンシェードの縁を切ったものをワイヤーにして、ケーブルタイを使って上部に固定します。
30㍑のビニール袋を真ん中あたりを切って穴を開けておきます。

そして下からかぶせ、接眼レンズが出るようにします。
余った部分はしばるかゴムで止めます。接眼レンズは指でさいてだします。

70㍑のビニール袋に先程のヘアーキャッチャーをつけてドレープを作ります。

70㍑はかなりぴったりなので、きつい感じになります。ビニールの底の中央を切っておいて、下からかぶせてシーラーで止めます。

空間がほしいので、ビニールの端を先程のワイヤーにひっかけて角をシールします。

<使用物品>
マイクロドレープ

マイクロドレープ